装丁家・多田和博さんのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装丁家の多田和博氏が、18日に急逝されました。

 

多田さんは

私が株式会社スプーンに入社した当時

アートディレクターとして在籍されていました。

多田さんがスプーンを去り

その後、私もフリーランスになって

多田さんからはたくさんの書籍のお仕事をいただきました。

 

多田さんは、一人で仕事をしている私を気遣ってくれました。

事務所へ行くとよく

喫茶店に誘ってくれたり、お昼ごはんをご馳走してくれました。

 

多田さんの挨拶はいつも

「オゥ!タオカー。儲かっとうかぁ?」

でした。

 

私はどちらかというと、額に入れて飾るような絵を描かないので

こんなんでええんかなぁと自信をなくすこともしばしばなのですが

多田さんがときどき、私の小さな絵を見て

「可愛いやないかぁ」

とニコニコと言ってくれるのが、私はとても嬉しかったです。

 

先月、たまたま近くを通ったついでに

ヒョイっと事務所に顔を出したら

ちょうどお知り合いの方からの頂き物を、スタッフと分け分けしてるところで

「タオカも持って帰りやぁ」

と多田さんがお皿に分けて持たせてくれました。

そのお皿を返さないとなぁ……と思いつつ

今年の冬の、想定外の寒さに気持ちが負けてしまい

また今度……としてしまったことが

今となっては悔やまれます。

 

多田さんの事務所からの年賀状は、

印刷された文面のすき間に、多田さんのボワっと丸い直筆で

「本年も宜しく!」

と、毎年ひと言だけ添えられていました。

今年はなぜか

「本年も宜しく!ガンバッテ下さい」

と書かれていました。

 

多田さん。ありがとうございます。

ガンバリマス。