困ってる人々。

昨日のことです。

 

外出先から帰っていると

あるお宅の玄関先に、そこの住人らしい高齢のご夫婦が立っていて

お父さんの方が玄関の鍵をガチャガチャとやっておられました。

その様子を横目で見ながら通り過ぎようとした時です。

お父さんの口から

「ハァァァァ…… 」という

明らかに、それまでの労力が報われない落胆と

(と、とりあえず休憩……)という気持ちが入り混じった

大きなため息が聞こえました。

 

ああ、鍵が開かなくて困ってるんだ・・・と直感しました。

直感というか

もうそれしかないと分かる、大〜きなため息でした。

私は一旦は通り過ぎて行きましたが

背後でまた

ガチャガチャ、ドンドン(←ドアを力ずくで開けようとしてる)

がくり返されだしたので

もうこのまま家に帰ることができなくなり、引き返して

「もしかして、鍵が開かなくて困ってますか?」

と声をかけました。

振り返ったお父さんは、背が高くて大柄で口元からアゴにかけて髭をたくわえていて

「アルプスの少女ハイジ」のおじいさんのよう。

ちょっと耳が遠いらしく手を当てて

「エエッ。なに??」

と聞き返してきますので

あー、なんかお節介なことしちゃったかなーと戸惑いながらも

鍵が開かないのかなぁ・・と思って……と言うと

「エ!カギ、開けれるの!?」

と、まるで私が鍵の専門家か何かのように期待の声で聞いてきます。

や。そ、そうではないんですけど・・・

と、二人の間に割って入ってドアの前に立つと

鍵は上下に二つ付いていて

お父さんは、上下の鍵をあっち回しこっち回しくり返してるうちに

もうどっちに回したらいいのか?こんがらがってしまった様子。

 

私はまず上の鍵を回してみました。

でも鍵は途中まで回って止まってしまいます。

うしろからお母さんが

「ちょっとしたコツがあって……」と

長年その鍵を開け続けてきた人でないと分からないことを言ってきますので

テキトーに、ドアをちょっと手前に引きながら回してみたら

カンが当たってクルンと鍵が回りました。

 

それでは〜、

と下の鍵を回してみたら

こちらはあっさりと回りきりました。

あ!回った!ドア開くかも!

と思った瞬間、私はここで大きなミスを犯したのでした。

 

なぜか私はドアを押してしまい、

ああ、ビクともせえへん。開かへん・・orz。

と、また上下の鍵をあっちに回したりこっちに回したり、元に戻したり。。

私もお父さんの二の舞、ミイラ取りがミイラになりかけた時

ふと、お父さんに

「ドア、押して開けます?引いて開けます?」となにげに聞いたところ

「え?、、引くんやで。」

ああ。引くのか!

で、また上の鍵を例のちょっとしたコツで回し

下の鍵はヒョイっと回して、ドアをぐっと引いてみたら

ハイ。あっさりと手前に開きました。

 

「わ!どっち回したん!!??」

とお父さん、目を丸くして聞いてきます。

私はお父さんに、上はこっち、下はあっち、と回す方向を伝えて

開いてよかった。ではでは。

とその場を去りました。

お母さんは「わざわざ戻ってきてくれてまで・・・」とにこやかに見送ってくれましたが

お父さんの方は

ドアを開けたままの状態でまた鍵をさして

あっち回したりこっち回したりして、ずっと確認していました。

お父さん、なんかミョーに面白かったです。